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むやみなIT投資が会社をダメにする!データと統計分析に潜む危険

むやみなIT投資が会社をダメにする!データと統計分析に潜む危険
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  • AIとかビッグデータを活用しないと!と焦っている
  • 何となくIT投資がしたいと感じている
  • データを集めれば、きっと良いことがあると考えている

上記のような考えをお持ちの方は危険です。一歩立ち止まって、少し考えてみませんか?

むやみなIT投資の危険性に迫ります。

現代のビジネスでIT活用は必須です。経済産業省「2016年版中小企業白書」より、下記のグラフをご覧ください。

黄色の折れ線はIT投資を一度も行わなかった企業の売上高経常利益率で、オレンジの折れ線は2010年からIT投資を開始した企業の売上高経常利益率です。2007年にはIT投資を行わなかった企業の売上高経常利益率の方が高いのですが、2013年にはIT投資を開始した企業に追い抜かれてしまっています。

このように、IT投資には生産性を向上させる効果が確かにあります。しかしながら、何でもいいからITシステムを買ってきて動かせばいいというものではありません。IT投資の成功率は50%程度という調査もあります(参考:ITシステム導入に失敗しない心構えを高収益企業に学ぶ!)。

また、近頃は「ディープラーニング」や「ビッグデータ」といったキーワードがメディアで大々的に取り上げられたこともあり、「大量のデータを集めてAIで解析すれば、人間には不可能だった新たな洞察を得ることができる」というイメージが広まっています。

確かに、データを集めることは大切です。客観的なデータは意思決定における議論の共通基盤になりますし、思い込みを正すきっかけになることもあるでしょう。私自身、このブログで頻繁に統計データを引用しています。また、AIで分析して深い洞察を得られることがあるのも事実です。

しかし、データもAIも決して万能ではありません。最新のAIといっても、所詮は統計的な解析の延長上にある技術です。

「統計的な分析」を行うことはすなわち、事象を確率的に扱うことを意味します。したがって、確率についてよく分かっていないと落とし穴にハマることになります。

では、「データ」に潜む危険と「統計分析」に潜む危険について、順に見ていきましょう。

計算可能性がもたらす歪み

まず、「データ」に潜む危険について考えていきましょう。

データは、その性質によって大きく2種類に分類することができます。数量的なものは「定量データ」と呼ばれ、文章で寄せられた顧客の感想などは「定性データ」と呼ばれます(参考:分析してる?マーケティングデータ活用の初歩!)。

IT投資によってデータを活用する場合、定量データはそのまま統計分析を行い、文章のような定性データは、文章中の単語の出現回数などを利用して定量データ化した上で分析にかけることになります。

さて、データに基づいて意思決定を行うことは、普通は望ましいこととされています。データに基づいた客観的な判断の方が、個人的な経験に基づく主観的な判断より正しいというわけです。

確かに、データに基づいて考えることによって意思決定の質を高めることができるのは事実です。しかし、「データに基づかない判断は劣ったものだ」と考え始めると危険です。

世の中には、データ化することの難しいものがたくさんあります。人々の価値観や理念、従業員の創造力など、データ化することが非常に困難でありながら、人々の消費活動や企業のイノベーションに影響を与えている要素がたくさんあるのです。

データ化に馴染むのは本質的に「計算可能」なものです。意思決定がデータに依存すればするほど、計算不可能な要素が無視されていき、意思決定の視野はどんどん狭くなっていき、歪んでいきます。

データも大事ですが、データにできないこともまた大事であると理解していないと、どこかで歪みが限界に達するでしょう。

確率論と統計の限界

次に、「統計分析」に潜む危険について見ていきます。

この記事の冒頭で「統計分析を行うことは事象を確率的に扱うことを意味する」と書きましたが、事象が確率的であるとはどういうことなのでしょうか。

「確率とは何か?」とは今なお議論が続いている大きなテーマであり、確率論という一つの学問分野にまでなっています。

その確率論の様々な学説の中で、統計学の基礎になっているのが「頻度説(ひんどせつ)」と呼ばれる学説です。

例えば、サイコロを振って1の目が出る確率は6分の1です。この「6分の1」というのを、頻度説では「サイコロを無限回振ってデータをとってみると、1の目は全体の6分の1を占める頻度で出てくる」と考えます。さらに詳しく知りたい方は下記リンクが分かりやすいです。

(外部リンク)確率の定義 – Qiita

ここでポイントなのは「サイコロを無限回振って」の部分です。私たちは「6分の1の確率です」と言われると「6回に1回は当たるんだな」と考えてしまいがちですが、そうではないのです。頻度説では「無限回サイコロを振った結果、1の目は全体の6分の1を占めている」時に「1の目が出る確率は6分の1」と言うわけですから、例えば600回サイコロを振って、最初の500回は全て6の目が出て、最後の100回だけ1の目が出るといった、偏った目のでかたをした場合でも、「1の目が出る確率は6分の1」と言います。この場合、最初の500回のどこの6回を取り出してみても1の目は存在しませんし、逆に最後の100回からどこの6回を取り出してみると、全てが1の目になっています。

これは非常に重要なことです。あなたが高価なAI解析システムとデータ収集システムを導入して分析した結果、「A商品を買った人がB商品も買う確率は6分の1(約16.67%)」と判明したとしましょう。これは「A商品を買った人の6人に1人はB商品も買う」という意味ではなく「A商品を買う人を無限に集めると、そのうちの6分の1はB商品も買う」という意味です。

AI解析も含め、統計分析で分かることは「無限に繰り返したらどうなるか」ということでしかありません。それも、全く同じ条件で無限に繰り返す必要があるのです。ですから、頻繁に条件が変わるような出来事や、「1回限り」のように十分な反復回数を確保できない出来事に対しては弱いのです。

もちろん、日常的に何回も繰り返されている出来事から規則性を導き出すことは、それはそれで価値のあることです。しかし、経営判断のレベルが高度になっていくほど、その対象は「1回限り」とか「前例のない」出来事になっていきます。こうした判断までAIや統計に頼ろうとするのは非常に危険なのです。

まとめ

現代のビジネスにおいてIT投資は不可欠なものですが、一方でデータや統計分析の使い方を正しく理解していないと、思わぬところで痛手を負うことになりかねません。

IT投資を行う際に最も重要なのは、「何のためにその投資を行うのか」を明確にしておくことです。IT投資の目的を考えるのはシステム販売会社の仕事ではなく、IT投資を行う会社自身の仕事です。

メディアのIT熱に浮かされて、何の準備もなくむやみに投資を行うことの無いよう、よく注意してくださいね。

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