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新規顧客を獲得し続けることは、事業内容を問わずあらゆるビジネスにとって重要な課題です。

「新規顧客を獲得する方法が分からない」「新規顧客を獲得するためのアイデアが知りたい」「今まで何となく営業してきた」というお悩みをお持ちであれば、この記事はまさにうってつけです!

この記事では、新規顧客を獲得することが企業経営にもたらす意義から解説し、具体的な新規顧客獲得施策の紹介とメリット・デメリットの解説、さらには施策の絞り込み方まで網羅しています。

新規顧客獲得の本質を理解して、戦略的に施策を打てるようになりましょう!

新規顧客の獲得とは?

この記事で考えていく「新規顧客の獲得」とは「これまでに一度も取引したことのないお客様に対して新たに売上をあげること」です。

つまり、「新規顧客の獲得」は、より上位の概念である「売上を上げる」ための一つの選択肢であるということになります。

売上を上げる方法は、新規顧客の獲得も含めて全部で6つの方法があります。「新規顧客の獲得」を狙うということは、その6つの売上アップの選択肢の中から「新規顧客の獲得を強化することが、最も効率的に売上をあげられるはずだ」と判断したということになります。詳しくは次の記事をご覧ください。

焦って「何か手を打ちたい!」と考えている時ほど、「売上アップ=新規顧客獲得」「事業の成長=新規顧客獲得」といった短絡的な発想に陥りがちです。

もし「新規顧客とリピーター、ウチはどっちの対策を強化すべきなんだろう?」「新規顧客の獲得と顧客単価の向上では、どちらが今のウチの売上のボトルネックになっているんだろう?」といった議論を経ず、「とにかく新規顧客だ!」となっている場合には、行動を起こす前に戦略をしっかり練り直すことをオススメします。

新規顧客の獲得は利益を圧迫する

前節では新規顧客の獲得は売上を上げるための選択肢の一つであるということを説明しました。

新規顧客の獲得は、他の選択肢と比べて「企業の利益を圧迫しやすい」という特徴があります。理由は2つです。

1.新規顧客は顧客単価が低い

第一に、新規顧客は顧客単価が低くなりがちです。リピーターは高額の商品を頻繁に買ってくれる可能性が高いのに対して、新規顧客は安価な商品を1回買って終わりになってしまう可能性が高いということです。

「20:80の法則」あるいは「パレート法則」という言葉をご存知でしょうか?「ある企業の顧客をその売上順に並べると、上位20%の優良顧客だけで当該企業の80%の売上を稼いでいる」という経験則です。

これ自体は科学的な法則でも何でもなく、この法則が当てはまらない成功企業も多数存在しています。しかしながら、比率は別として「優良顧客(リピーター)の方が、新規顧客よりも顧客単価が高く、少人数でも企業の売上を大きく構成している」という普遍的な現象の分かりやすい例として、マーケティング業界では良く言及されます。御社の場合でも、リピーターと新規顧客の顧客単価に明らかな違いがあるのではないでしょうか?

したがって、新規顧客ばかりが増えると顧客単価の低下を招き、利益を圧迫する危険性があります。

2.新規顧客は獲得コストが高い

新規顧客の獲得が企業の利益を圧迫することになる理由の第二に、「顧客獲得コストが高い」ことが挙げられます。

米国での「新規顧客獲得のコストは既存顧客の維持コストの約5倍」という有名な調査結果があります。下記の書籍に詳しく書かれています。

これは「1:5の法則」と名付けられています。これもまた比率は別としても、新規顧客に商品を買ってもらうのは、既存顧客にもう一回お買い物してもらうよりもコストがかかるのは普遍的な現象です。

新規顧客に商品を買ってもらうためには、まず自社や商品の存在に気づいてもらうチャンネルづくりから投資しなければなりません。気づいてもらった上で、自社の事業内容や商品ラインナップ、ブランドの世界観や競合他社との違いを学んでもらうための様々な情報発信・コミュニケーションを行って、ようやく最後にお客様になってもらえるわけです。

もちろん、商材によってはもっと簡便な意思決定プロセスで買い物することが一般的なジャンルもありますが、それにしても既に信頼関係ができあがっている既存顧客との取引よりも、新規顧客を獲得する方がコストがかかるというのは明らかです。

以上より、新規顧客は顧客単価が低く、しかもその獲得にかかるコストが高くつくため、企業の利益を圧迫してしまう可能性があるのです。

したがって、本気で「新規顧客の獲得」を強化していくのであれば、コストは高くつくし、利益率も下がる可能性が高いことをあらかじめ念頭においた上で、長期的な観点から戦略的に実施する必要があります。

気まぐれに新規顧客向けのキャンペーンを実施して、「コストばかり掛かって成果が上がらないから中止しよう」と短期的に判断してしまうと、全てが中途半端になって失敗に終わる危険性が高いのです。

それでも新規顧客を獲得すべき3つの理由

前節では、新規顧客の獲得は「顧客単価の低下」と「顧客獲得コストの高騰」によって企業の利益を圧迫する危険性があることを説明しました。

これだけ聞くと、わざわざリスキーな新規顧客の獲得に投資するよりも、既存の優良顧客の囲い込みに集中した方が良さそうに見えます。

実際、2000年代後半から「成熟市場では市場のパイは広がっていかない。新規顧客の獲得はパイの奪い合い競争になって利益が薄いから、少ない投資で大きな効果が見込めるリピーターの囲い込みに注力すべし!」といった「顧客囲い込みマーケティング」の考え方が支持を集めるようになってきました。

学術論文:清水良郎(2007)『顧客囲い込みマーケティングの死角』

しかしながら、それでも新規顧客の獲得は企業にとっての必須課題であり続けています。新規顧客の獲得をおろそかにする企業・ブランドに、明るい未来は無いでしょう。

国内随一の著名マーケターである松本健太郎氏も、顧客囲い込みマーケティングへの批判を行い、企業は新規顧客を獲得し続ける必要があると明言しています。

参考:松本健太郎『「新規顧客獲得」に失敗する最大の理由は「人間」を見に行かないからだ』

この節では、企業が新規顧客を獲得し続けなければならない3つの理由を説明します。

1.新たな優良顧客と出会うため

企業が新規顧客を獲得しなければならない理由の第一は「新たな優良顧客と出会うため」です。

当たり前ですが、今現在その会社の最大の優良顧客になっているお客様も、最初は「新規顧客」だったはずです

名古屋学院大学の清水良郎教授は、「実在する大手広告会社X」の事例を報告しています。

学術論文:清水良郎(2007)『顧客囲い込みマーケティングの死角』

X社の売上位10社のうち4社は,その時点から振り返って,数年の間に新規開拓から育成され,主力クライアントになった得意先企業である。思わぬきっかけで,扱い高ゼロから100億円の大型得意先に躍進した例もある。

さらに、X社の優良顧客は過去20年間で、家電業界,食品,酒造,薬品,金融サービス,人材サービスとめまぐるしく変遷しており、新規顧客の中からその時代を支える優良顧客を次々と獲得できたことが、X社の経営を支えてきたと分析しています。

顧客層の流動性の高いビジネスにおいては特に、新たな優良顧客に出会うための新規顧客獲得が不可欠なのです。

2.リピーターの離脱率をゼロにはできないため

企業が新規顧客を獲得しなければならない理由の第二は「リピーターの離脱率をゼロにはできないため」です。

そもそも人間には自由意志がありますから、顧客の意思決定を企業が強制することはできません。どれほどの優良顧客であったとしても、環境の変化や気まぐれで離脱してしまう可能性は常に存在しています。

したがって、新規顧客を獲得し、新たなリピーターと出会い続けなければ、リピーターは減少し続けていくばかりとなってしまい、やがて売上が立たなくなってしまいます。

この点は、工業関連の中小企業が1990年代後半のバブル崩壊や、2008年のリーマン・ショック時に痛切に実感することとなった課題です。

かつて、日本における工業系の中小企業は、いわゆる「系列関係」の網の目に組み込まれていました。トヨタ自動車のような巨大企業の系列の中で、固定の顧客向けに製品を納品していれば商売が成立していた時代です。

しかしながら、バブル崩壊やリーマン・ショックのような経済危機が訪れ、「系列関係」は次第に力を失っていきました。巨大企業はグローバル市場に打って出て、コスト競争力のある海外に生産拠点を移設していまい、中小企業は取り残されてしまいます。突如として、数十年来の「優良顧客」を失ってしまったのです。

この危機の時には多くの中小企業が倒産や経営危機の憂き目を見ましたが、「これからは自分たちで新規顧客を獲得できるようにならなければいけない」と舵を切り、マーケティングのノウハウを蓄積できた企業は生き残り、成長することができたのです。

3.新規顧客獲得を目指すこと自体が企業を成長させるため

企業が新規顧客を獲得しなければならない最後の理由は「新規顧客獲得を目指すこと自体が企業を成長させるため」です。

標準的なマーケティングの教科書に必ず載っている事項のひとつに「4P分析によるマーケティング・ミックスの最適化」があります。

効果的なマーケティングを行うためには「4P」すなわち「Product(プロダクト:製品)」「Price(プライス:価格)」「Place(プレイス:流通)」「Promotion(プロモーション:販売促進)」の4つの要素を分析し、その組み合わせとしての「マーケティング・ミックス」を最適化しなければならないという考え方です。

この4Pの考え方から、新規顧客を獲得するためには、いわゆる「売り方」である「Place(プレイス:流通)」「Promotion(プロモーション:販売促進)」に留まらず、「Product(プロダクト:製品)」の在り方も改善していくことになります。

既存の技術や商品を新規顧客向けに販売しようと努力することで、「Place(プレイス:流通)」「Promotion(プロモーション:販売促進)」に関するノウハウが蓄積されて、その企業の三有できる市場が広がるという意味での、企業の成長も期待できます。

しかしそれにも増して、新規顧客を獲得するために、あるいは獲得した新規顧客が持つ既存顧客とは異なるニーズに対応するために、企業は「Product(プロダクト:製品)」を改善する必要性を感じるのです

新規顧客を意識することで、その企業には「新たな視点」が持ち込まれます。それが新技術や新商品の開発の動機となって、事業拡大を導くのです。

以上のような「新規顧客を獲得することが企業を成長させる」という議論を支持する研究もあります。

一橋大学の岡室博之 助教授(当時。現在は教授)が新規開業企業について行った研究で、「積極的な新規顧客開拓を行った企業は、そうでない企業よりも成長率が4%以上高くなる」という統計分析の結果を報告しています。

学術論文:岡室博之(2004)『新規開業企業の取引関係と成長率』

具体的な新規顧客獲得方法と施策のメリット・デメリット

前節まで、新規顧客の獲得を目指すことの課題や意義を説明してきました。この節からは、新規顧客を獲得するための実践的な内容を解説します。

具体的な新規顧客の獲得施策を考えるに際しては、顧客の意思決定プロセスにあわせて、それぞれのステップごとに最適なアプローチを行うことが重要です。

顧客の意思決定プロセスに関しては消費者心理学において様々なモデルが議論されています。また、「AIDMA」や「AISAS」のようにマーケティング業界でよく利用されるモデルもあります。

今回は単純に「①問題認識→②情報探索→③比較・購買」の3ステップで意思決定を行っていると仮定して、それぞれのステップで有効な施策をご紹介します。

購買意思決定プロセス1:問題認識

顧客の意思決定プロセスは、そもそも現状に問題意識を感じるところから始まります。現実の状態と理想とする状態との間にギャップを感じ、そのギャップを埋めるために有用な商品を求めて情報収集を開始するのです。

この段階の見込み客は、まだ何かを買おうと思っている訳ではありません。また、自分から積極的に情報を探しているわけでもありません。

企業の方から見込み客のライフスタイルに寄り添う形で情報を発信し、まずは自社や自社の商品について存在に気づいてもらう必要があります。

この段階の見込み客に向けては、以下のような施策が有効です。

・集客用ブログ

現代人は何かあればすぐに検索する習慣が身についています。集客用にブログ記事を作成し、様々なキーワードで自社のホームページが表示されるようになれば、新規顧客を獲得していくことができます。

ちなみにBtoBビジネスにおいても、新たな取引先を探すときや業務上の課題が見つかった時には、43.8%の企業がWebメディアを主な情報源に使ったという調査結果があります。

参考:BtoB商材の購買行動に関するアンケート調査

BtoCビジネスのみならず、BtoBビジネスにおいてもWebサイトの活用は有効です。

この集客用ブログでは、自社商品を軸に記事を用意するよりも「ターゲットのライフスタイルや課題」を軸に記事を用意することが重要です。

例えば「デスクワークで肩や首がコリがちな40代の女性」を主なターゲットにしている整体院があるとしましょう。「上手な整体院の選び方」とか「肩こりを根本治療するために整体院に行くべき3つの理由」などのような、自社のサービスを軸にしたブログ記事ばかりを公開しても、問題認識段階の見込み客には興味を持ってもらえません。

もっとターゲットのライフスタイルに寄り添って、「疲れ目に聞く5つのツボ」とか「キーボードの打ちすぎで手が痛いときのマッサージ」など、整体という自社の商品から少し遠くても見込み客の生活の質を高めるような記事の方が、集客用ブログとして効果が期待できます。

もっとターゲットの生活について洞察を深めて、「子どもをねこ背にさせない!まくらの選び方」や「仕事のイライラを家に持ち込まないためのリラックス法」などの記事があると、より広い新規顧客にアプローチできるでしょう。

こういった記事を用意するためには、ターゲットに関する深い洞察が必要になります。ペルソナ法などのターゲットを明確化する手法を併用しつつ、記事のアイデアを出していきましょう

集客用ブログのメリットは、文章さえ書ければ情報発信できるので内製化のハードルが低いという点です。もちろん、自社ホームページにブログ機能があることが前提になりますが、その技術的条件さえカバーできれば、後はお金を掛けずに記事を増やしていくことができます。

資金的に余力が無く、大規模かつ継続的に広告を打つことができない創業直後の企業や個人事業主においては、特に有力な施策になります。

集客用ブログのデメリットは、手間が掛かることと、効果が出るまでに長期間を要することです。

手間が掛かるのはお金が掛からないことの裏返しでもあるので、ある程度は仕方ありません。お金も手間も掛けないのであれば、何もできないからです。

効果が出るまでに長期間を要することについては、予め理解しておく必要があります。

ブログ記事で狙う検索キーワードやターゲット層、商材などによって変わりますが、いくら頑張ってブログ記事を書いても、ホームページのアクセス数アップや問い合わせ件数の増加といった目に見える成果を実感できるようになるまでには、半年〜1年程度はかかることが多いです。

もし確固としたコンテンツ戦略が無かったり、キーワード選定やブログ記事の執筆ノウハウが無ければ、成果が出るまでにかかる期間はもっと長くなります。

・SNS

FacebookやTwitter、InstagramなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使った情報発信も、将来の新規顧客に自社の存在に気づいてもらう有効な方法です。

SNSはサービスごとに利用者の属性に偏りがあります。自社のターゲットにマッチする層が多く利用しているサービスで情報発信することが重要です。

また、SNSを活用する場合には「SNSは社交の場であって、売り込む場所ではない」ということを忘れてはいけません。FacebookにはFacebookの、TwitterにはTwitterに特有の「ノリ」のようなものがあります。それを無視して自社の宣伝ばかりしているようでは、ほとんど見向きもされないどころか、悪くすれば反感を買ってしまうこともあります。

SNSのメリットは、集客用ブログと同じく基本的にはお金がかからないことです。また、SNSで公開する投稿は、一つひとつがブログ記事に比べてコンパクトであることが多いです。数百文字のテキストや写真一枚から、立派なコンテンツとして受け入れられますので、手軽に色々な投稿を行って、反応をうかがうことができます。

SNSのデメリットは、こちらも集客用ブログと同じく、ある程度のフォロワーを集めるまでには時間がかかることが多いという点が挙げられます。

また、SNSに投稿した内容は時間の経過による陳腐化が早く、コンテンツ資産として蓄積できない点も大きなデメリットです。

SNSのように「時間が経つとすぐに価値を失い、誰も見なくなるコンテンツ」をフロー型コンテンツと言います。これに対してブログ記事のように、時間が経っても価値を失わないコンテンツはストック型コンテンツと呼ばれます。

この点について詳しくは下記の記事もご覧ください。

・広告

オフラインではダイレクトメールや折込広告、雑誌の広告欄、看板など。オンラインではリスティング広告やディスプレイ広告など。新たな見込み客に企業から能動的にアプローチするのが広告です。

これまでに見てきた集客用ブログやSNSが、基本的には「お客様の方から見つけてもらおう」とする「プル型」の施策であったのに対して、広告は「こちらからお客様に仕掛けよう」という典型的な「プッシュ型」の施策です。

広告を打つ場合には、ターゲットを明確にし、そこに最適化したクリエイティブ(広告の文章や画像など)を用意することが重要です。

例えばオンラインのリスティング広告やディスプレイ広告の場合、ターゲットを設定して特定の属性を持つユーザーに対してだけ広告を届けることが可能です。また、オフラインの広告でも雑誌等に広告を掲載する場合には、その雑誌の読者層が自分の狙っているターゲットであることをきちんと確認しましょう。

ポスティングのような、地域を単位として行う広告でも、その地域に関するエリアマーケティングデータを予め収集・分析し、ターゲット像を明確にしておくべきです。

広告のメリットは、ターゲット像とクリエイティブさえ間違えなければ、比較的短期に成果を上げやすいことです。

広告とは、お金を払って既存の情報ネットワークに自社のPRを掲載してもらう行為です。既にできあがっているネットワークを利用するので、成果を短期間であげることができるのです。

一方、広告のデメリットはお金がかかることです。広告の出稿料はもちろん、広告クリエイティブの制作も外注した場合には、相応の先行投資を行うことになります。

また、広告を表示できるスペースには限りがあるため、非常に限定的な情報しか伝えることができないのもデメリットです。

潜在顧客の問題意識を刺激するような1点にアピールポイントを絞り込み、それを適切なクリエイティブに落とし込んだ広告を打てなければ、大きな成果を挙げることは難しいでしょう。

・イベント出店 展示会 商談会

商店街や商業施設でのイベントに出店したり、展示会・商談会に参加したりすることも、問題認識の段階にある見込み客にアプローチする有効な方法です。

上記のようなイベントには様々な企業が集まるおかげで、様々なニーズを持ったお客様が集まります。「A店が目当てで来たけど、せっかくだから会場を一周しよう」という方々に、まずは自社を知ってもらうところから始めましょう。

この手法のメリットは、見込み客と直接対面できることです。特にBtoBビジネスの場合には、その場で名刺交換を行って見込み客の連絡先を入手できます。接客・営業に慣れた人材であれば、高い確率で次のプロセスに誘導できるでしょう。

また、実際に対面で会話したうえで「Webサイト」や「チラシ」などの他の情報源に触れてもらうことで、より鮮明な印象を与えることができるようになります。

「イベント出店 展示会 商談会」のデメリットは、イベントの参加料や準備の手間がかかることが挙げられます。それに加えて、イベントのターゲットと自社のターゲットが不一致だと無駄に終わる可能性が高い点が重要です。

イベントへの参加を考える際には、そのイベント主催者が誰をターゲットにイベントを企画しているのかを確認しましょう。そのイベントの告知方法(ポスティング?ダイレクトメール?商業施設にポスター?)や、他の参加予定企業の客層もチェックすれば、そのイベントに誰が集まるのか予想できます。

購買意思決定プロセス2:情報探索

現実の状態と理想とする状態との間にギャップを感じ、そのギャップを埋めるために有用な商品を求めて情報収集を始めます。

この段階の見込み客は、購入する商品を選ぶための「評価基準」と「選択肢」を明らかにするのが課題です。

「自分のギャップを解消するためには、どんな商品の選択肢があるんだろう?」「その選択肢を比較するためには、どういう評価基準が有効なんだろう?」という情報ニーズがありますから、それに答える情報を提供すれば良いわけです。

この段階の見込み客に向けては、以下のような施策が有効です。

・育成用ブログ

顧客の興味関心を育て、確度の高い見込み客(ホットリード)を育成するために、ブログを役立てることが可能です。これを育成用ブログと呼びます。

育成用ブログでは、見込み客に「あなたのギャップを解消するには、こんな選択肢があるんですよ」「その選択肢から最適なものを選ぶには、ココをチェックしたらいいんですよ」と、解説するような記事が有効です。

例えば旅行代理店であれば、「ボーナスが入ったら家族で行きたい世界の名所トップ5」といった記事は、ボーナスの使いみちの選択肢として旅行を提案しています。

さらに「10歳未満の子どもと一緒に楽しく旅行するためのチェックポイント」などの記事は、選択肢の評価基準を説明するものです。

育成用ブログのメリット・デメリットは集客用ブログと同じです。

つまり、メリットはお金がかからず、文章さえ書ければ良いのでハードルが低いことです。

デメリットは、手間がかかることと、成果がでるまでに時間がかかることです。特に育成用ブログの場合、狙うキーワードが人気であることが多く、ライバルが強力です。ライバルに勝たなければ検索結果の上位に自社のブログを表示させることができません。

育成用ブログにおいては、集客用ブログよりも高度なコンテンツ戦略が必要になります。そのノウハウがない場合には、より一層の長期戦を覚悟しなければいけません。

・カタログ パンフレット eBook

カタログやパンフレット、それを電子化したeBookなどは、情報探索段階の見込み客に対して非常に有効です。

小冊子ほどのボリュームがあれば、見込み客が必要としている情報を網羅的に掲載しつつ、自社商品の詳細な紹介までつなげることができます。「自分のギャップを解消するためには、どんな商品の選択肢があるんだろう?」「その選択肢を比較するためには、どういう評価基準が有効なんだろう?」という情報ニーズを満たしつつ、商品紹介を行うバランスを意識しましょう。

カタログ パンフレット eBookのメリットは、その情報量の多さに加えて、チラシより廃棄されづらいことや、企業としての信頼度が向上することが挙げられます。しっかりしたパンフレットを持たない中小企業も多いですから、パンフレットがあるというだけでも一歩リードできるでしょう。

カタログ パンフレット eBookのデメリットは、制作に手間とお金がかかることです。

デザインは制作会社に任せられるにしても、掲載する大量の情報は、基本的には自社で整理して提供する必要があります(コンテンツのディレクションまで外注することも可能ですが、制作料は高額になります)。

とはいえ、小冊子は一回作れば長く使える場合が多いでしょうし、ちょっとした商品の差し替えや文言の変更程度であれば、修正コストも安上がりです。長い目で見れば「カタログ パンフレット eBook」の製作コストはそこまで高いわけではありません。

・事例 実績 お客様の声

ホームページやチラシ、カタログなどに、事例や実績の紹介を掲載すれば、情報探索段階の見込み客にアピールできます。

そもそも「実績があるかどうか」が見込み客にとっての評価基準の一つになります。

さらに、事例紹介や実績紹介の中で、利用者がどのようにして理想の状態を実現したかを解説すれば、同じような課題を抱えている見込み客にとってその商品が非常に魅力的に見えます。

また、事例や実績の中で「この商品を選んだ理由」などの項目を用意すれば、「選択肢を比較するためには、どういう評価基準が有効なんだろう?」という情報ニーズにも対応することができます。

事例紹介や実績紹介、お客様の声のメリットは、ライバルにマネできない独自のコンテンツになることです。そのお客様の満足の声や、完成した実績にまつわるストーリーは、それぞれが個別の出来事です。特に意識しなくても独自のコンテンツになるでしょう。

また、ユーザー側からの視点が加わることで、見込み客に「客観的な情報」として受け止められやすいこともメリットです。

事例紹介や実績紹介、お客様の声のデメリットは、「公開可能な実績」がなければ作りようがないことです。

商材によっては、企業秘密に関わる部分があって「お客様の声」として掲載しづらい場合もあります。そういった場合には、「メーカー様」「部品工場様」のような特定できない形でも良いので掲載させてもらえないかを交渉しましょう。

購買意思決定プロセス3:比較・購買

情報収集のプロセスを経て、十分な選択肢と評価基準が得られたと感じた見込み客は、いよいよ購買の意思決定を行います。収集した選択肢を評価基準に従って評価し、最も好ましい商品を購入します。

この段階まで到達した見込み客は、既に選択肢となるブランドと評価基準が定まっています。したがって、「その選択肢の中で、自社商品が最も望ましい」ということをアピールするべきです。

・訪問営業 電話営業

BtoBビジネスの場合には、最後の段階で訪問営業や電話営業が登場します。マーケティング部門が「①問題認識→②情報探索」のプロセスを経て自社商品への期待度が高まった見込み客(ホットリード)を営業部門に提供することができると、会社全体のマーケティングが有効に機能するようになります。

逆に、問題認識段階の見込み客に営業部門が営業を仕掛けても全く手応えを得られず、営業コストが高く付くだけで終わります。

見込み客は営業と合う前に情報収集のほとんどを終えており、意思決定もほぼ決まりかけているということを忘れてはいけません。

訪問営業・電話営業のメリットは、個別の見込み客に応じたキメ細かい情報提供ができることです。「お客様が購買に踏み切れない理由は何か」「お客様はどういう評価基準を持ち、他の選択肢に何をイメージしながら、ウチの商品を見ているんだろう」といった点を意識して、購買を思い止まらせている「最後の情報ニーズ」を満たしましょう。

訪問営業・電話営業のデメリットは、営業担当者の力量によって結果が左右されやすいことです。せっかく「比較・購買」のプロセスまで育て上げた見込み客ですので、しっかりクロージングできなければ、それまでにかけたコストを回収できません。

これをカバーするため、入念に練り上げられたセールス・スクリプトの作成や、実際の営業場面で説明に使える豊富な営業資料の作成、十分な研修機会などを整える必要があります。

・無料サンプル トライアル

無料サンプル・トライアルを提供し、見込み客にとっての購買リスクを低減することは「比較・購買」プロセスを推し進めるための有効です。

商材が高額である場合や、継続利用・定期購入が前提の商材である場合には、特に有効です。

無料サンプル・トライアルのメリットは、とにかく利用してもらうことにより、見込み客に「使用経験」を持ってもらえることです。良好な使用経験が有るブランドは、無いブランドに比べて非常に有利になることは消費者心理学において理論化されています。

無料サンプル・トライアルのデメリットは、販促コストがかかることです。商品を無料で提供するわけですから当然です。

したがって、配布対象を戦略的に絞り込むことが重要です。確度の高い見込み客向けのチャンネルで無料サンプル・トライアルの提案を行うようにしましょう。

・値引きキャンペーン 特典付与

期間限定の値引きキャンペーンや特典・オマケの付与も、最後に購買に踏み切るきっかけづくりに有効です。

値引きキャンペーンや特典付与のメリットは、非常に簡単に実施できて、大きな反響も期待できることです。

値札の金額を書き換えるだけで値引きキャンペーンは実施できますし、既にある商品をオマケにつければ簡単に特典付与キャンペーンも実施できます。

ただし、値引きキャンペーン等には深刻なデメリットがあることを忘れてはいけません。

まず値引きキャンペーンそれ自体が顧客単価を低下させます。さらにキャンペーンを連発すると、消費者による定価の認識を書き換えてしまい、「キャンペーン中の値段が本当の定価」と感じられるようになってしまいます。

また、値引きキャンペーンは誰にでも実施できるため、簡単に「値引き競争」の引き金を引いてしまいかねません。これは社会学で「囚人のジレンマ」問題と呼ばれています。詳しくは次の記事をご覧ください。

こうしたデメリットを十分に認識しつつ、期間や頻度を絞り込んだうえで値引きキャンペーンや特典付与を活用するようにしましょう。

新規顧客の獲得単価で施策を絞り込む

ここまで、具体的な新規顧客獲得施策について、顧客の意思決定プロセスに従いながらメリット・デメリットを確認してきました。

こうしたアイデアを全て実施できれば良いですが、実際にはコストの制約があります。限られたコストの範囲の中で、効果的な施策に絞り込んで実施していく必要があるのです。

新規顧客獲得に掛けられるコストは「顧客獲得単価」あるいは「CPA(Cost Per Acquisition)」といいます。この顧客獲得単価について予算(いくらまでかけられるか)と実績(いくらかかったか)を測定し、施策の評価に役立てます。

それでは計算方法を確認しましょう。

1.最もシンプルな顧客獲得単価の計算

最もシンプルな1人あたりの顧客獲得単価(予算)の計算方法は次のとおりとなります。

1人あたり顧客獲得単価(予算) = 売上高 – 原価・販売コスト – 残したい利益

例えば1万円の売上に対して原価・販売コストが3,000円で、残したい利益が4,000円という場合には、1人あたり顧客獲得単価(予算)は3,000円となります。

図示すると次のようになります。

したがって、新規顧客を獲得するために掛けられるコストは最大で3,000円ということになります。

2.リピートも考慮した顧客獲得単価の計算

先程の計算方法では、リピート購入が考慮されていません。

この記事の「それでも新規顧客を獲得すべき3つの理由」でも解説したとおり、新規顧客を獲得する理由は「新たなリピーターに出会うため」です。リピート購入も考慮にいれて顧客獲得単価(予算)を計算しなければ片手落ちです。

リピート購入も考慮に入れて計算する場合、式は次のようになります。

1人あたり顧客獲得単価(予算) = (購買1回あたりの平均売上高 – 原価・販売コスト – 残したい利益) × 平均リピート回数

例えば、既存顧客のデータを分析して「1年間に平均して3回リピート購入してくれる」ことが分かったとしましょう。他のパラメーターは先程と同じく、購買1回あたりの平均売上高は1万円で、原価・販売コストは3,000円、残したい利益が4,000円だとすれば、リピート考慮済みの1人あたり顧客獲得単価(予算)は年額9,000円となります。

図示すると次のようになります。

リピートを考慮することによって、1人の新規顧客を獲得するために9,000円まで投資できるようになりました。また、リピート回数を改善できれば1人あたり顧客獲得単価(予算)の金額を上げることができ、よりダイナミックな施策を打つことができるようになります

リピートも考慮した中長期的な観点から顧客獲得単価を計算することで、ライバルに負けない合理的な施策選定が可能となるのです。

顧客獲得単価(予算)はこのように計算し、定期的に再計算しながら運用していきましょう。

まとめ

この記事では、新規顧客を獲得するために必要な考え方から具体的な施策まで、総まとめを行いました。

「新規顧客を獲得する」というのは、売上を上げるための選択肢の一つです。顧客単価アップやリピート率アップなど、他の選択肢と比較して「今の自社の弱点(ボトルネック)は新規顧客不足だ」と言える状態になっている必要があります。

それというのも、新規顧客の獲得は短期的には企業の利益を圧迫するリスクがあるからです。低い顧客単価と高騰する顧客獲得コストが、企業の利益率を悪化させます。

それでも新規顧客を獲得しなければいけない理由は3つありました。つまり、①新たな優良顧客と出会い、②どうしても離脱率をゼロにはできないリピーターを補充・拡大し続け、③さらには企業自体を成長させるために、新規顧客を獲得しなければならないのです。

このように「新規顧客の獲得」のリスクと本質的な意義を確認した上で、具体的な施策について解説しました。

顧客の意思決定プロセスにあわせて、それぞれの段階の情報ニーズに適切に応える施策を打つことが重要です。

最後に、無数に存在する新規顧客獲得施策を絞り込む基準として、「新規顧客獲得単価」を紹介しました。

新規顧客の獲得に掛けられる予算は有限です。しっかり戦略を立案し、運用体制を整えた上で、新規顧客の獲得にチャレンジしましょう。

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