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自社のホームページを作ってマーケティングに活用したり、会計システムを導入して業務を効率化をしたりと、ビジネスに欠かせないITシステムですが、その導入に際してはリスクがあることを認識し、きちんと準備する必要があります。そこで、IT投資から成果を引き出している高収益企業が何をしているのか確認しましょう。

ITシステム投資の成功率は決して高くありません。日経コンピュータの調査によると、2003年のシステム開発・導入プロジェクトの成功率はわずか26.7%でした。最近は成功率が改善したものの、2018年でも52.8%程度となっています。

約50%のリスクを負ってまでITシステムに投資することで得られるリターンは何なのでしょうか。経済産業省「2016年版中小企業白書」には、IT投資を行っている企業の方が売上も売上高経常利益率も高いというデータが掲載されています。売上高経常利益率は企業の事業活動全体における利益率を表す指標ですから、IT投資を行っている企業の方がビジネスの規模が大きく、事業の効率も高いという実態が見てとれます。

もちろん、このデータだけでは「そもそも成功している企業が余力を使ってIT投資しているだけ」という可能性が残ります。そこで同白書から別のデータを見てみましょう。下図は2007年から2013年までの売上高経常利益率の推移を「IT投資実施企業」と「IT投資非実施企業」とに分けて描いたグラフです。

IT投資実施企業は、2007年時点ではIT投資を行わない企業より低い利益率だったにも関わらず、2013年にはIT投資非実施企業を追い抜いて大きく成長していることが分かります。

IT投資実施企業は、2007年時点ではIT投資を行わない企業より低い利益率だったにも関わらず、2013年にはIT投資非実施企業を追い抜いて大きく成長していることが分かります。

高収益企業のITシステム投資への取り組みに学ぶ

ITシステムへの投資を成功させるためにはどうしたら良いのでしょうか。これについても、「2016年版中小企業白書」が貴重な示唆を与えてくれます。同一企業規模内での売上高経常利益率が上位25%の企業を「高収益企業」、下位25%の企業を「低収益企業」として、IT投資の効果を得るために有意だった取り組みの実施状況を示すのが次のグラフです。

高収益企業と低収益企業とで特に差が大きい項目(点線で囲まれた項目)に着目すると、「IT導入に併せた業務プロセス・社内ルールの見直し」や「IT導入に対しての各事業部門、従業員からの声の収集」など、高収益企業はIT導入に際して主体的・全社的に取り組んでいるということがうかがえます。

ITシステムを導入するということは「新しい業務フローを導入する」ことを意味します。あなたが購入しようとしているのは仕事の進め方そのものであって、プログラムではないと考えてください。仕事のやり方を変えるのですから、それに併せて社内ルールを見直す必要もあれば、新たな業務フローについての事前説明や研修も必要です。

ITシステムの導入にあたっては、受け入れ側の積極的な参加なくして成功は無いことを忘れないでください。

まとめ

ITシステムの導入は約半数のプロジェクトが失敗するほどの難しい試みです。しかし、成功すればビジネスの規模拡大や体質改善が期待できます。ITシステム導入を失敗に終わらせないために、高収益企業の取り組みを見てみると、ITシステム導入を機に従来の業務フローを見直し、従業員の声も吸い上げて、新しい仕事の仕組みを作っていこうとする積極性が重要だということが分かります。

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