客単価のアップは売上を確固たるものにし、ビジネスの利益率を高めるために不可欠です。
「客単価を上げる方法が分からない」「客単価を上げるためのアイデアが知りたい」「客単価をあげようと色々やって失敗してきた」というお悩みをお持ちであれば、この記事はまさにうってつけです!
この記事では、客単価を上げるために必要な考え方から紹介し、具体的な施策の紹介や、それぞれの施策のコツも解説しています。
客単価アップの方法を学び、事業の成長につなげましょう!
この記事の目次
客単価を上げるのは売上アップの選択肢の一つ
まず確認しておきましょう。あなたはなぜ「客単価を上げたい」と考えているのでしょうか?
「客単価を上げることによって売上をアップさせ、さらには利益を伸ばすため」と答える方がほとんどです。
しかし、売上を上げる方法は客単価の向上だけではありません。新規顧客をもっと多く獲得するために努力してもいいですし、離脱客(リピートを辞めてしまうお客様)を減らす方が効率よく売上が上がるかもしれません。
これから詳しく見ていきますが、商材や業種によって、客単価のアップに向き不向きがあります。また、売上アップのボトルネックが本当に客単価なのか否かは個々の会社の状況によって異なっており、データを分析しなければ分かりません。
客単価を上げるのは、売上げアップのための選択肢の一つに過ぎません。この記事では客単価アップについて掘り下げていますが、「客単価アップ以外にも売上を上げる方法はある」という広い視野を失わないように注意しましょう。本質的に重要なのは「客単価を上げること」ではなく、「ボトルネックを解消して売上を上げること」なのです。
売上アップの全体像を学びたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
客単価を上げる方法は4つだけ
ある一定期間における客単価は、「1人あたりのお買い物回数」と「お買い物1回あたりの購買金額」の掛け算で計算できます。
もう少し真面目な言い方にすると、次のようになります。
平均顧客単価 = 1人あたり平均購買回数 × 1回あたり平均購買金額
ある1ヶ月の間に、3,000円のお買い物を2回してくれた顧客の「客単価」は2回×3,000円=6,000円です。
さて、上の式の「1回あたり平均購買金額」は、さらに「買ってくれた商品の平均単価」と「買ってくれた商品の数量」に分解できます。
1回あたり平均購買金額 = 購買商品数量 × 平均購買商品単価
例えば6個の商品を買ってくれて、その6個の商品の平均単価が500円なのであれば、そのお買い物はトータル3,000円になりますよね。
ここでストップしても良いのですが、もう少し分解してみましょう。「購買商品数量」は、「何種類の商品を買ってくれたか」と「個々の商品を何個買ってくれたか」に分けられます。
購買商品数量 = 購買商品種類数 × 1種類あたり平均購買個数
先程の例を続けてみます。買ってもらった6個の商品の内訳がA商品が1個、B商品が1個、C商品が4個だったとしましょう。この場合、「購買商品種類数」は3種類で、「1種類あたり平均購買個数」は2個になります。
ここまで分解したことで、「客単価を上げる」ためには「4つの項目のどれかを改善する」しかないということが分かります。
つまり、客単価をアップさせるためには、次の4つの選択肢の少なくとも1つを実現するしかないということです。
- 一人あたりの購買回数を増やす
- 平均商品単価を上げる
- 購買してもらう種類数を増やす
- 一回1種類あたりの購買個数を増やす
当たり前といえば当たり前のことですが、この4つを個別にしっかり意識することは非常に重要です。
例えば、いきなり「客単価を2倍にする!」と言うと非現実的な目標のように見えます。
しかし、客単価は4つの項目の掛け算でできていることを思い出してください。「一人あたりの購買回数を1.2倍にする」「平均商品単価を1.2倍にする」「購買してもらう商品の種類を1.2倍にする」「商品1種類あたりの購買個数を1.2倍にする」という4つのサブ目標を達成すれば、「1.2 × 1.2 × 1.2 × 1.2 = 2.07」で、客単価2倍は実現できてしまうのです。
1.2倍ですから、例えばいつも500円の商品を買ってくれるお客様に、600円の商品を買ってもらえるようにすれば良いのです。あるいは、平均すればいつもA商品を5個買ってくれるお客様に、6個買ってもらえるようにすれば良いのです。
このような小さな改善を4つ重ねることで、非現実的に思えた「客単価2倍」を実現することができるのです。
それでは、以下では具体的に客単価アップの4つの方法に基づいて、具体的な施策をチェックしていきましょう。
客単価を下げる原因から見直す
客単価アップの具体的な施策を考える上で、まず振り返って頂きたいのは「客単価を自分から下げていないか」という点です。
当然ですが、「客単価を上げる」よりは「客単価を下げない」こと。つまり「客単価を下げている行動をやめる」ことの方が圧倒的に簡単で効果も確実です。
本節では、典型的な客単価を下げる原因を確認します。
1.クーポンや値引きキャンペーンの乱発
手っ取り早くお客様を集めて売上を立てるために、値引きキャンペーンや割引クーポンの発行はよく行われます。なかには毎日クーポンを発行しているお店もありますね。
しかしながら、これは自分で自分の首を締めている状態です。早く値引きによる価格勝負から脱出できないと、ジワジワと経営が行き詰まっていきます。
恒常的な値引きや頻繁なキャンペーンを実施していると、いくら「期間限定!」と銘打っていたとしても、お客様は「値引き後が本当の定価なんだ」と考えるようになります。
こうなってしまうと、「キャンペーンをしないと売れない→キャンペーンを実施→キャンペーン後の価格が定価だという顧客の認識を強化する→より一層キャンペーンをしないと売れなくなる」という悪循環に陥ってしまいます。
また、「価格が安いから」という理由で引き寄せられたお客様は、長期的に優良顧客になってくれる可能性は低いです。ただ単に値段を見て買ってくれただけで、あなたのビジネスの信念や、ブランドの目指す姿、品質への努力などには興味がないからです。
そもそも、クーポンの発行や値引きは戦略でも何でもありません。こういった誰にでもできる何の工夫もない施策をやっていては、経営が苦しくなって当然です。特に価格競争で大企業に勝てない中小企業では、価格以外の「買ってもらえる仕組み」が絶対に必要になります。
クーポンや値引きキャンペーンは、他の施策との組み合わせや長期的な狙いがあって初めて、「マーケティング施策」と呼べるものになるのです。
今まで値引きに頼ってきた場合、いきなり値引きをやめるのは怖いと感じられるでしょう。実際、客単価は上がっても客数が減って、売上が下がるかもしれません。
しかし、そのままではジリ貧であることも事実です。この記事で後述する、様々な客単価アップ施策や、新規顧客獲得施策などを実施して売上低下リスクを軽減しつつ、計画的に「値引き依存」を脱却していきましょう。
2.新規顧客を追いすぎている
客単価を下げる原因の2つ目は、新規顧客の獲得だけに夢中になってしまうことです。
もちろん、新規顧客を獲得することは事業の継続・成長のために不可欠です。そのことは、次の記事で詳しく解説しています。
しかしながら、上の記事でも述べているように、新規顧客の客単価はリピーターに比べて低くなります。しかも、新規顧客の獲得にかかる販促コストは、リピーターにもう一回お買い物してもらうためにかかる販促コストよりも圧倒的に高くつきます。
要するに、新規顧客は短期的には利益にならないのです。
新規顧客を追いすぎて客単価が低くなり、「売っても売っても儲からない」という状態になってしまうと、「じゃあもっと新規顧客を集めないと!」という悪循環に陥ります。
3.離脱率が高すぎる
上の「新規顧客を追いすぎている」とも関連しますが、新規顧客の方ばかり見てリピーター対策を怠っていると、リピーターが増えていかずに客単価が下がります。
「新規顧客は結構きてくれているのに、みんな一見さんで終わってしまう」という場合には、離脱率がボトルネックになっている可能性があります。
穴の空いたバケツに水を貯めることができないように、離脱率の高いビジネスはいくら新規顧客を集めても顧客基盤たるリピーターが増えていかず、成長することができません。
「チラシをまく」「ホームページのSEO対策にお金をかける」などの新規顧客を獲得するための施策ばかりになっていませんか?
いまの事業を支えてくれているのは、いまのリピーターの方々です。感謝の気持を込めて、リピーターの皆様の役に立つ施策を始めましょう。
客単価を上げる具体的な施策
前節では客単価を下げる原因をチェックしました。
この節では、客単価を上げるための具体的な方法について一つひとつ解説します。
1.商品の価格を上げる
販売する商品の価格を上げれば、客単価を上げることができます。「商品の値段を上げてしまったら、客足が遠のいて売上が下がってしまう!」と反感を抱かれることも多い「値上げ」戦術ですが、商材や値上げの方法によっては売上アップ・客単価アップに繋げることが可能です。
商品に何の変更も無くただ単に値上げする行為は、物流価格の高騰や原材料費の高騰など、社会的に認知されている「正当な理由」が無ければ反感を買ってしまうでしょう。
したがって、基本的には「商品の質を高めながら値上げする」「商品のサイズアップをしながら値上げする」など、商品に変更を加えながら値上げすべきです。
あるいは、通常価格を値上げしつつも、期間限定で値上げ前の金額で買えるようにするといった方法も、反感を抑えつつ値上げしやすいでしょう。
なお、ネット上には「お客様は細かい値段のことは覚えていないから黙って値上げすればOK」「値上げしましたと告知するから売れなくなる。値上げするならバレないように」といった無責任なことを書いているサイトが存在しますが、言語道断です。
例えば、「バレないように値上げ」の典型例にシュリンクフレーション(shrinkflation)があげられます。値段は据え置きにして、サイズや内容量を縮小(シュリンク)させることで、実質的に値上げする手法です。食品業界などで近年頻繁に使われていますね。
さて、「黙って値上げすれば消費者にはバレないから問題ない」という説に従えば売上は下がらないはずですが、実際は真逆の結果が出ています。
日経新聞によると、シュリンクフレーションを実施した10食品のうち7品目が販売額を下げています。そしてそれ以上に、シュリンクフレーションの情報がSNSであっという間に共有され、ネガティブイメージが広がってしまいました。
外部サイト:値上げより減量 厳しい目|日本経済新聞(2018/10/19付)
そもそも「失った信用はお金では取り戻せない」ということはマーケティング理論以前の「商人道徳」とも言うべき常識の問題です。社会心理学における社会的ジレンマ研究、あるいはコミットメント問題研究は、この商人道徳が正しいことを支持しています。マーケティング論においても、近年のオーセンティシティ・マーケティングの流れは商人道徳を現代の文脈に翻訳したものと解釈可能です。
値上げする際には、お客様に対して誠実であることを忘れてはいけません。
この施策が向いている商品:食料品・化粧品・サービス商品全般
2.計画的に新商品を出す
計画的に新商品を出していくことで「またお店に行く理由」を提供しましょう。定期的にお店をチェックしてくれるお客様が増えることで、「一人あたりの購買回数」が増加し、客単価を上げることができます。
新商品の販売開始は、既存のお客様にコンタクトを取る良いきっかけになります。BtoCビジネスであればダイレクトメールでお客様に来店を促しましょう。BtoBビジネスであれば、ご無沙汰になっているお客様に電話してコミュニケーションを取る理由になります。
ここで言う「新商品」は客単価アップが目的です。「事業領域の拡大」「新規市場にチャレンジ!」といった社運をかけた新商品開発とは別に考える必要があります。「ルーチン業務としての新商品開発」ですので、簡単・低リスクで継続可能なものであるべきです。
ということで、客単価アップを目的とした新商品であれば、既存のターゲット層向けに既存商品をベースとして展開するのが低リスクで合理的です。「季節限定カラー」のような、色を変えるだけでも立派な新商品です。
ほかには、新たなセット商品の開発も「既存ターゲット層向け」「既存商品をベースにしている」といった条件を満たしており、継続的に実施しやすい施策です。
この施策が向いている商品:衣料品・化粧品・家具・家電製品
3.クロスセル
お客様が買ってくれる商品の関連商品をオススメし、買い物一回あたりの購買商品の種類を増やすことで客単価をアップさせるのが「クロスセル」です。
クロスセルは様々な業種で取り入れられている手法です。ハンバーガーチェーンでの「ハンバーガーとご一緒にポテトもいかがですか?」という声がけ、靴屋での「お買い上げの靴を長持ちさせるために、防水スプレーのご利用をオススメしています」という案内など、クロスセルの具体例は至る所にあります。
ネットショップにおいては、Amazonのような「この商品をお買い上げのお客様に人気の商品」を表示するレコメンド機能が、クロスセルを自動化した事例です。
「もう一品」をオススメするコツは、「お客様が購入を決めた瞬間にオススメすること」と「購入した商品よりも割安な商品を紹介すること」の2点です。
これは社会心理学の分野で知られる「ローボール・テクニック(low-ball technique)」の要請によります。
相手が取りやすいボールを投げてまず取らせてしまう、つまり意思決定をさせてしまい、後になって条件を付与していく方法がローボール・テクニックです。「人は一度ある決定をしてしまうと、後でその内容が変わっても、なかなか決定を変えようとしない」という人間の傾向を利用しています。
このローボール・テクニックに従えば、「お客様が購入を決めた瞬間」に「購入を決めた商品よりも割安な商品を一緒に買う」という条件を付与された場合、既に購買の意思決定を済ませてしまっているので、つい「買う」という判断をしやすいということになります。
とはいえ、もちろんキッパリ「要らない」と仰るお客様も居ます。その場合、決して押し売りしないように注意しましょう。押し売りによって不快な思いをさせてしまえば、そのお客様は二度と来店してくれないかも知れません。いま安い商品を押し売りするより、気持ちよく帰って頂いて、また来店してもらったほうがお店の利益になるはずです。
クロスセルを促進するもう一つの代表的な方法が「セット商品」の販売です。飲食店で「ランチセット」や「ディナーコース」などのセット商品を利用した経験のある方は多いはずです。
他にも、スーツ店や家具店の「新生活応援セット」、スポーツ用品店やカメラ店の「入門者向けセット」など、セット商品は様々な切り口から提案されています。
セット商品を成功させるコツは、ネーミングにこだわることです。「そのセットは誰に向けて用意されたものなのか」「そのセットが解消してくれる悩みは何なのか」「そのセットはどんなシーンで利用すべきなのか」など、そのセットの狙いがしっかり伝わる名前を付けることで、お客様は付加価値を感じるようになります。
「入門者の私に向けてプロが選んでくれたセットなら間違いない」「しかもセットで買うとお得になるのなら、このセットを買おう」と多くのお客様に考えてもらえれば、そのセット商品は成功です。
ところで、セット商品はセット値引きや特典の付与が必要ですから、原価率が高くなります。この点を嫌う経営者の方もいらっしゃるでしょう。
しかし、セット商品がしっかり売れれば単品に比べて粗利は増えます。在庫の回転も良くなりますから、総合的に見れば経営が楽になることの方が多いです。
この施策が向いている商品:外食・雑貨・衣料品・趣味用品
4.アップセル
より高いグレードの商品を買ってもらうことで客単価を上げるのが「アップセル」です。「安価な商品から入ってもらったお客様に、もっとハイレベルの商品を買ってもらう」ということですから、客単価アップの王道を行く手法です。
代表的なアップセル施策は「優良顧客の特別待遇」です。
常連さんにだけ新商品のサンプルを配布したり、飲食店であれば一品サービスしたりと、業種に応じて様々な「優遇」の形があります。このような優遇を行うことでカスタマーロイヤリティ(お客様のお店・ブランドに対する没頭度合い)を高め、よりハイグレードな商品を買ってもらえる可能性を高めることができます。
より直接的にアップセルに繋げたいのであれば、優良顧客にだけ高グレードな「裏メニュー」を案内する、ヘビーユーザーにだけハイエンド商品の「先行予約」を可能にするなどの方法もあります。
優良顧客の特別待遇施策を考える際に気をつけたいのは「システム化しないこと」と「あけっぴろげにやり過ぎないこと」の2点です。
「システム化しないこと」というのは、例えばポイントカードで「ゴールド会員」「プラチナ会員」などのランクを付け、ランクごとに特典を付与するような「優遇」の在り方は望ましくないということです。
システム化された優遇では、特別感を演出することができません。「このお店は私のことを見て、私だけを特別扱いしてくれている」という優越感や特別感があるから、お客様の予想を超える驚きと満足感を提供できるのです。
また、「あけっぴろげにやり過ぎないこと」も重要です。
お客様も大人ですから、「商売として、一見さんよりも常連さんを優遇するのは当然だろう」という常識は持っています。なので、特別待遇を完全に秘密にする必要はありません。
だからといって、目の前で別の客にだけ「常連のあなたには特別なご案内がありまして…」とやられて気分が良い人はいないでしょう。
優良顧客を優遇するために、新規顧客を不快にさせる必要性はありません。十分に配慮した方法で、特別な案内を出すように注意しましょう。
優良顧客の優遇以外のアップセル施策としては、いわゆる「松竹梅理論」の活用が挙げられます。
「松・竹・梅の3つのグレードの商品があると、人はつい真ん中の竹グレードの商品を買ってしまいやすい」というのが「松竹梅理論」の教えるところです。
これには認知心理学的な根拠があり、「アンカリング効果」や「ゴルディロックス効果」の観点から説明されることが多いです。
「非常に高額な松グレードの値段を見た後だと、本当はそこそこ値が張るはずの竹グレードの値段がお買い得に感じられる」というのがアンカリング効果です。
「人間は極端な選択肢を嫌う。選択肢を3つ出されると、その本質的な価値に関わらず、中間の竹グレードを選びたくなってしまう」というのがゴルディロックス効果です。
ややこしい名前は覚えなくても大丈夫です。ともあれ、要するに3つのグレードを用意すれば、一番安い梅グレードではなく、真ん中の竹グレードを買ってもらいやすくすることができるのです。
いま現在のラインナップが2種類しかなく、安い方ばかりが売れて困っているという場合には、あえて高額の松グレードのラインナップを加えることにより、竹グレードの商品を買ってもらえる可能性を高めることができます。
この施策が向いている商品:外食・家電製品・専門サービス業
5.まとめ買い促進
一回のお買い物でたくさんの商品を「まとめ買い」してもらえれば、客単価アップにつながります。もちろん、まとめ買いによってお買い物の回数が減る可能性もありますから、それぞれの影響を継続的にチェックすることが必要です。
まとめ買い促進施策の代表例はチケット制度・回数券の導入です。
5回や10回といったまとまった個数の売上が確定し、さらに未提供の商品代金を予め受け取ることができて資金繰りまで改善します。
お客様は回数券による割引を受けることができるため、Win-Winの関係です。
まとめ買いを促進する別の施策としては、購入金額に応じた特典の付与が挙げられます。「〇〇円以上のお買い物で送料無料」といった施策が代表的です。
回数券や特典の付与は、セット商品と同様に原価率が高くなるという弱点があります。ただし、これもセット商品と同様に、販売個数が増えることによって粗利が増加し、在庫の回転も早まりますから、よほど無理な割引を実施しなければメリットの方が大きくなります。
この施策が向いている商品:整体・サロン・カフェ・スーパー銭湯・ネットショップ
客単価を上げるための戦略を立てよう
前節では、客単価を上げるための具体的な施策について確認しました。
「よし、さっそくウチでも実践しよう!」と元気よく進みたいところですが、その前に少し時間をとって「客単価アップ戦略」をしっかり練り上げることを強くオススメします。
「目標の売上高は具体的にいくらなのか?」「そのために客単価は何円になればよいのか?」「そのために一回のお買い物で何個の商品を買ってもらえればよいのか?」など、ゴールとなる具体的な指標がなければ、これから実施する施策の成功・失敗を判断することができません。
また、あらかじめ「一回のお買い物で3個買ってもらえるようにしよう」と具体的に決まっているからこそ、「3個の商品を組み合わせてセット化しよう」「2個買ってくれるお客様に積極的にクロスセルを仕掛けよう」といった具体的で精度の高い施策が生まれてきます。
こうした戦略立案の過程をスキップして、いきなり施策の実施に飛びついてしまえば、一回こっきりの思いつきの施策に終わってしまいがちです。
よく考えられた戦略のもとで、施策の実施と結果の評価、そして改善活動を組み込んだ「組織的な取り組み」「体系的な取り組み」として継続して実施しなければ、大きな成果を出すことは難しいのです。
ビジネスの長期的な成長を願うのであれば、ぜひ最初に時間をかけて、面倒でも戦略立案から始めることを徹底しましょう。
まとめ
この記事では、客単価を上げるために必要な考え方と具体的な施策について解説しました。
そもそも、客単価を上げるのは売上アップの選択肢の一つです。他にも売上を上げる方法は存在するため、本格的に客単価アップを追求する前に、まず「ウチのボトルネックは本当に客単価が低いことなのか?」をよく考える必要があります。
その上で、客単価を上げる方法は、次の4つです。
- 一人あたりの購買回数を増やす
- 平均商品単価を上げる
- 購買してもらう種類数を増やす
- 一回1種類あたりの購買個数を増やす
この4つの掛け算で客単価がアップするため、それぞれを1.2倍にできれば客単価を2倍にすることも可能となります。
そして、客単価を上げるためには「客単価を下げている原因を取り除く」ことが最も確実だということも確認しました。特に値引きキャンペーンの乱発などは早急に見直す必要があります。
客単価を上げる具体的な方法を5つ紹介しました。
- 商品の価格を上げる
- 計画的に新商品を出す
- クロスセル
- アップセル
- まとめ買い促進
これら5つの施策は、それぞれ目的が異なっていますので、自社の状況にあわせて適切に組み合わせることが重要です。
そして最後に、客単価を組織的・体系的に、そして継続的に上げていくためには、事前の戦略立案が大切であることを強調しておきました。
万能な施策などありません。自社の状況を冷静に分析し、ボトルネックの追求と目標値の設定、そしてたゆみない改善活動が積み重なって、やっと安定的な客単価アップ・売上アップが可能になるのです。
参考文献
消費者心理学や行動経済学の知見を用いて、価格戦略を考えます。軽いストーリー仕立てになっており、入門者の方でも読みやすいと思います。
社会心理学・交渉理論について幅広く取り上げられています。分厚い本なので活字に慣れてないと苦しいかもしれません。ビジネスに役立つ様々なヒントを得られます。