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起業を考える人は誰もが不安を感じるものですが、今回はその中でも主要な5つの不安と、それにどう対処したらよいか、私の経験を踏まえてまとめました。

起業を考えている、あるいは準備を始めたけど、不安が絶えないという方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

販路の不安

社長の悩みというのは昔から相場が決まっていて、大抵は「販路開拓の不安」か「資金調達の不安」に分類できます。まずは販路の方から考えていきましょう。

分が独立・起業したとして果たしてお客さんを確保できるのだろうか、というのは誰もが不安に感じることです。

会社員時代は、誰かが取ってきた仕事をこなすか、誰かの専門技能をアピールして仕事を取ってくるかのどちらか一方をやっていれば毎月給料が出ていたわけです。それに比べると、自分の能力を自分でアピールして、さらに獲得した仕事を自分でこなすことまで考えなければいけませんから、とても大変なことです。

しかし、起業家自身やその家族が生活できるくらいのお客さんを集めることは、そんなに難しいことではありません。

データとして、起業後に高い成長率をマークした事業の、実に66.9%が「退職した企業とは取引関係を持たない形で起業」しており、自力で販路を築き上げていったことが伺えます。

参考:独立開業を成功させる秘訣を統計データに見る

私自身も、準備の段階では全くお客さんの見込みが無いままに起業してしまいました。しかし、いざ起業してみると今まで想像もできなかったような様々な出会いがありました。市役所や商工会議所などの行政の方々や、同じように起業しようとしている方々とのネットワークが少しずつ拡大していく中で、「このネットワークの中で自分にできることは何か」を考えて行動していくことで、自然と販路が広がっていくものです。

大企業レベルの層の厚い販路を開拓することは個人レベルではとてもできないことですが、あなたが始めようとしている生まれたばかりの事業が継続できるレベルならば、あなたがこれから作り上げていくネットワークの中で充分にお客さんが見つかるはずです。

そのネットワークがどのようなものなのか、事前に把握することはできません。様々な偶然や個人の趣味趣向が複雑な相互作用を繰り広げる中で、一人ひとりが違った形のネットワークに属することになります。ネットワークの成長に時間がかかってしまう人もいる一方で、思った以上のハイペースでネットワークが拡大して驚く人もいるでしょう。

具体的な姿が分からないにも関わらず、何らかの形のネットワークが構築されることだけは確かなのです。思い切って踏み出すことで初めて具体的な形が実現していく類のものとでも言えましょうか。

往々にして、あなたの事業の最初のお客さんになってくれる人は、会社員としてのあなたが出会える範囲の外に居るものです。そんなに不安になることは無いのではないでしょうか。

資金の不安

社長の悩みの2大分類、「販路の不安」と「資金の不安」の2つめ、資金の不安を見ていきましょう。

起業すると、当然ですが毎月一定の給料がもらえるという会社員の特権は失われます。誰もあなたの生活を保証してはくれません。自分や家族の生活費はもちろん、事業を継続していくために必要な資金も、自分の力でなんとかしていく必要があります。

特に、開業の際に借り入れを行った場合には、資金の不安は強烈なものになるでしょう。

とはいえ、よほどのことが無い限り資金のことは何とかなります。

金融機関からの借り入れを行う場合には、事業計画書の作成から融資の面談まで、複数のステップを経てようやく借り入れが実現します。そのステップを踏んでいく中で、もしあなたのビジネスプランに非現実的なところがあれば必ず指摘され、あなたは知恵を絞ってその解決策を考えることになります。

こうしてビジネスプランが洗練されていくため、借り入れが実行されるような事業は成功の可能性も高くなります。また、仮に事前の計画どおりにいかなくても、金融機関と協力しながら軌道修正していくことで、大抵の事態には対応できるでしょう。

一方で、借り入れを行わずに起業できるビジネスの場合、ランニングコストはかなり低いはずです(そうでなければ、あなたは相当なお金持ちのはずですから、そもそも資金の不安は無いですね)。

「販路の不安」の項目で説明したとおり、あなたとその家族の生活が成り立つ程度の収入であれば、そこまで困難なく確保できるものです。であれば、これもまた資金についてそこまで恐れる必要は無いでしょう。

そもそも、事業を始めてみてダメだったらまた働けばいいだけのことで、何も難しいことは無いのではありませんか?

見通しが立たない不安

将来の見通しが立たないことは、起業を意識し始めた頃から起業後まで、ずっとついて回る不安のタネです。

「こんなビジネスで上手くいくんだろうか」「お金は借りられるだろうか」「人は集まるだろうか」などなど、事業を営むということは課題の連続に向き合い続けるということです。将来の見通しはおろか、目の前の課題の解決策さえ分からない場合が多々あります。

この「見通しが立たない不安」と上手く付き合っていく方法を体得することは、起業家として避けては通れない試練といえるでしょう。

ここで考えてみて欲しいのですが、そもそもあなたが「見通し」だと思っているものの正体は何でしょうか。

私自身も経験のあることですが、会社員時代はなんとなく将来の見通しを持っている気になっています。会社の人事異動の慣行から「何年後にはどこそこの部署だなぁ」と思っていたり、自分の成績から「何年後には課長になって、上手く行けば何年後には部長になれるかも」などと見積もっていたりしています。

しかし、これは会社の慣行から自分が勝手に想像しただけのものであり、誰が保証してくれているものでもありません。会社員の「見通し」などこの程度のものです。

起業すると、「見通し」は自分で「見通す」ものに変わっていきます。自分の経験と直感から、「この問題は◯日あれば何とかなるだろう」とか「このタイプの案件は経験無いけど、何とか成功させることができるだろう」といったように、自らが見通して、行動を(そして将来を)決めていくのです。

いっけん、無責任で行き当たりばったりなように思われますが、何の保証もなく自分が思い込んでいるだけという意味では、会社員の「見通し」と変わるところはありません。

むしろ、自分自身がその見通しを立て、そこに力を注ぐという点では、会社員の見通しよりも積極的で意味のあるものとさえ言えるでしょう。

このように、自らが見通しを生み出し、それによって不安を払拭できるようになれば、あなたも立派な「経営者」になったと言えるのではないでしょうか。

したがって、「見通しが立たない不安」は、まだ雇われ根性が抜けきっていないことを教えてくれるひとつの指標として捉えると良いでしょう。

技術力の不安

大学発の技術ベンチャーなどの特殊な例を除けば、多くの起業家は自分の技術に不安を感じるものです。

「起業するには、まず〇〇というスキルを勉強しないとダメだ」というのは誰でもが考えることですが、突き詰めるとキリのない問題でもあります。

私自身は、「〇〇を経験していないとプロとは言えない」とか「〇〇という手順を踏んで勉強しないと本物にはなれない」といった言説は全部ウソだと思っています。

あらゆる技術には様々な「学び方」が存在しますし、そこに本質的な優劣は無いはずです。ある人は学校や塾のようなところで体系的に勉強したかもしれません。また別の人は行き当たりばったりの実践の中で悪戦苦闘しながら体得していったかもしれません。

「正しい知識は学校で教わるもの」という価値観に慣らされている私たち現代人は、なんとなく「体系的に勉強した人」だけが本当の技術を持つプロフェッショナルであると感じてしまうものです。

しかし、起業家がその価値観に染まったままではいけません。どれだけ勉強したところで、起業すれば未知の出来事が必ず出てきます。そうした課題に出会う度に自分の技術を高め、新たな技術を習得し、成果を挙げることができるのが、本当のプロフェッショナルではないでしょうか。

であれば、あなたは今の自分の技術力に不安を感じたり感じなかったりしていることにこだわっていることはあまり本質的では無いのです。

お客さんに、今の実力で出来ないことを求められたとき、それでも挑戦する気概があるかどうか。これが最も重要なことなのです。

社会的地位を失う不安

起業すれば、少なくとも最初は社会的地位は全く無い状態になるでしょう。これを不安に感じる人は多いものです。

会社員として順調に出世していくであろう同僚たちを横目に、あなたは独り別の闘いを始めるわけです。プライドが傷つく場面もあるでしょう。

そういった不安を感じる場合、「では今は満足なのか?」と自問するといいかもしれません。

今の会社員としての社会的地位は、もろもろの面倒なことに目をつむって安心するには都合のいいものですが、果たしてそれでいいのでしょうか?

やりたいことに挑戦すること、自分の考えや実力を世に問うことは、それ自体に特有の面白さとやりがいのあるものです。そうしたことにチャレンジしたいと思っているにも関わらず、見えないふりをして生きていくことによって得られる「社会的地位」にどれほどの価値があるのでしょうか。

あなたには、何が最も重要なことなのか、本当は分かっているのではありませんか?

まとめ

以上、起業に際して直面する5つの不安と、それに向き合う考え方について説明しました。

起業には様々な不安と困難がつきものですが、やってみれば楽しいものです。私自身、経験した苦労さえも、愛しい思い出になっています。

一人でも多くの方が不安に負けることなく、起業まで到達することを願っています。少なくとも、私はあなたの起業を応援したいと思っています。一緒に頑張ってみませんか?

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