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本気で起業しようと考えると、そのタイミングをどうするかは非常に悩ましいポイントです。少しでも起業の成功率が高くなるようなタイミングにしたいと考えるのが人情というものですが、いったいどうしたら良いのでしょうか。今回は、各種統計データを手掛かりに、起業の先輩たちがどのような状況・タイミングで起業したのかを確認し、起業のタイミングを考えるヒントを得たいと思います。

起業のタイミングを開業費用で考えている人は多いのではないでしょうか。ネット上の情報では「1,000万円以上は必要」といった記事を見かけます。実際のデータを日本政策金融公庫の「2017年度新規開業実態調査」で確認します。

開業費用グラフ

上のグラフで、直近2017年の数値では、「500万円未満」が37.4%と最大の比率になっています。推移を見ても、開業費用が年を経るごとに徐々に少なくなっている傾向が見て取れます。

先輩起業家の苦労から考える

先輩起業家が苦労していることを把握して、その問題を解決する見通しが持てるか否かで起業のタイミングを考えるのも、筋の良い考え方と言えるでしょう。次のグラフをご覧ください。

開業時に黒したことおよび現在苦労していることグラフ

開業時に苦労したこととして挙げられてることは様々ですが、「顧客・販路の開拓(50.5%)」と「資金繰り、資金調達(47.0%)」の2つが主要な項目になっています。

起業の時点で具体的なマーケティング計画を持っていたり、資金のアテを持っていたりすれば、最初のハードルを超えることができそうです。

伸びる企業、伸びない企業のデータから見る

ここからは、小規模企業白書2017年版を使って起業後の成長タイプ別データを確認し、起業のタイミングを探って行きます。ここで「起業後の成長タイプ」は「高成長型」「安定成長型」「持続成長型」の3つに分類します。

起業後の成長タイプのイメージ

年齢から起業のタイミングを考える

成長タイプ別に、起業時の年齢の構成比を確認しましょう。

成長タイプ別に見た、起業家の年齢分布グラフ

上のグラフを見ると、全体的なボリュームゾーンは40代・50代であるということが分かります。また、高成長型企業は若い世代の比率が高く、持続成長型では高齢世代の比率が高くなる傾向が見て取れます。一気に成長する企業を作りたいのであれば、早めにチャレンジしたほうが良さそうです。

会社員時代の勤続年数から考える

学生起業、あるいは学校卒業と同時に起業というパターンは、まだまだ稀有な例です。多くの起業家は会社員を経験した後、起業に踏み切っていますが、具体的には何年くらい勤めていたのでしょうか。

成長タイプ別に見た、起業前の就業先での就業期間グラフ

上のグラフをご覧ください。まず、どの成長タイプでも「1年未満」の比率はとても小さいことに注意しましょう。また、高成長型と安定成長型が似たような構成比になっているのに対し、持続成長型では明らかに勤続年数10年以上の構成比が高くなっています。前の項で、持続成長型の企業は起業家の年齢も高めであったことと併せて考えると、長年勤めた会社を退職して起業に踏み切るというパターンが、持続成長型の典型例と考えられます。

前職とのつながりから考える

起業に際して、前職の会社とのコネがあるかないかは気になる点です。前職の会社とのコネを活用したほうがうまくいくのでしょうか?

成長タイプ別に見た、起業前の就業経験と起業の形態グラフ

上の図のとおり、「退職した企業とは取引関係を持たない形で起業」がどの成長タイプでも6割を超えています。また、高成長型の方が起業前の会社とのつながりが薄く、持続成長型に行くにつれてつながりが濃くなっていく傾向が見て取れます。普通に考えると前職の会社とのコネが強いほうがスタートダッシュをかけられそうな気がしますが、データを見るとそうではありません。起業のタイミングを考えるうえでは、在職中の会社とのつながりを確保できるか否かはあまり重視しなくても良さそうです。

先輩起業家が起業を考えたきっかけから考える

最後に、先輩起業家の「起業を考えたきっかけ」そのものをチェックしておきましょう。

上の表を見ると、持続成長型では「勤務先の先行き不安・待遇悪化」というネガティブな事情から起業に関心を持ったのに対し、ほかの成長タイプでは「周囲の起業家・経営者の影響」というポジティブな理由になっていることが分かります。起業のタイミングとして、「やむにやまれぬ事情から」というのは、あまり良くないようです。

まとめ

以上、6つの観点から起業のタイミングを検討しました。もちろん、起業のタイミングは個別の事情に大きく左右されるものですが、起業のための最後の一歩を踏み出す勇気を得るための「理由探し」の一助として、この記事を活用していただければと思います。

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