起業のネタを考えるとき、ぜひ活用して欲しいのがモジュール思考です。機能単位の「部品の集まり」としてビジネスをとらえることで、ヒトもお金も無い状態からでも実現可能なビジネスを考えることができます。
詳しく見ていきましょう。
モジュール(module)とは「システムを構成する一定の機能的まとまりを持った個々の部品」といったような意味の言葉です。
例えば「自動車」をひとつのシステムとして考えた時に、「タイヤ」や「エンジン」など「それ単独で一定の機能的価値がある部分」がモジュールであると言えます。モジュールはあくまで分析に役立てるためのツールですから、分析の目的にあわせてモジュールの大きさをもっと小さく捉えても問題ありません。
IT業界ではソフトウェアの開発に際して、お客さまがソフトに求める機能を分析し、機能ごとにモジュールとして切り分け、そのモジュール単位でプログラムを書いていったりします。
ここでご提案するモジュール思考とは、ビジネスを「モジュールの組み合わせ」として捉え、既存のビジネスモデルの分析や、新しいビジネスの構想に役立てようというものです。
より早く、より楽に
モジュールのメリットは、「再利用性の高さ」と「組み合わせの柔軟性」にあります。
モジュールは機能的単位で切り出された部品であるため、単独でも一定の価値を持ちます。したがって、「あるシステムのモジュールを別のシステムに組み込んで再利用する」ということが可能です。
ソフトウェアをモジュール単位で開発するのも、あるソフト開発の時に作ったモジュールを別のソフトで似たような機能が必要な時に再利用したいからです。
モジュールによるシステム構築の究極の姿は、すでにどこかのシステムで作ったモジュールを組み合わせることにより、新たな部品の開発を全く行うことなく、全く別のシステムを完成させてしまうことです。
組み合わせの妙によって新たなシステムを完成させるわけですから、一から作り上げるよりも素早く、少ない負荷で新たな価値を生み出せるのです。
モジュール思考的ビジネスのメリット
モジュール思考で起業のネタを考えることによるメリットは大きく3つ挙げられます。
1.事業領域の絞り込みがしやすい
モジュール思考の1つ目のメリットは、事業領域の絞り込みがしやすいことです。
起業する際は、個人事業として始める場合はもちろん、法人として始める場合でも、経営資源が本当に限られています。ヒトもいない、充分なお金もない中で、大きな企業にも負けない付加価値を生み出さなければいけせん。したがって、少ない経営資源を絞り込んだ事業領域に集中投下する必要があります。
モジュール思考は、ひとつのシステムを複数の機能的部分に切り分けて考えます。ある業界、ある地域において、自分が強みを発揮できるモジュールはどこなのか考えます。
その際、ご自身が用意できる経営資源の豊富さにあわせてモジュールの大きさを変えてください。例えば個人事業の場合であれば、「自分一人でカバーできる大きさ」をイメージしてモジュールを切り出していくと上手く分析できます。
2.モジュールの組み換えによる柔軟なビジネス展開
モジュール思考の2つ目のメリットは、モジュールの組み換えによって、多様なニーズに対して柔軟なビジネス展開が可能なことです。
モジュール思考でビジネスを考案した場合、充分に事業領域が絞り込まれつつも、「単独で機能的価値を持つ」ビジネスになっています。
仮にお客さまから、自分一人ではカバーしきれない規模や仕様の依頼を受けたとしても、そのつど自分でカバーできない部分のモジュールになってくれる外部のパートナーや業者とコラボレーションすることで、商機を逃さず対応できます。
この際、自分のビジネスが「単独で機能的価値を持つ」というモジュールの定義を満たしていることが重要です。あなたのビジネスが単独で価値を持つからこそ、外部のパートナーはあなたと組むことにメリットがあるのです。あなたのビジネスに単独の機能がなければ、単に顧客を奪われておしまいになってしまうでしょう。
3.スピード感のあるビジネス
モジュール思考の最後のメリットは、スピード感のあるビジネス展開が容易であることです。
自分のビジネスがモジュール単位で整理されているため、あるお客さまへの価値提供で使った資源を、別のお客さまへの価値提供の際に再利用できる場面が多くあります。
モジュールの再利用は、素早く、少ない負荷での価値提供を可能にするため、ビジネスのスピードをアップさせると同時に充分な利益の確保も可能となります。小規模な創業期のビジネスにとって、スピードは大手企業に対抗する強力な武器の一つになります。
まとめ
単独で機能的価値を持つ部品である「モジュール」の集まりとしてビジネスを捉えることで、小規模に始めざるを得ない創業期にマッチしたビジネスを考案しやすいのです。
何気ない日常をモジュール思考で見つめ直してみることで、必ず起業のネタを発見することができます。ぜひ活用してくださいね。