起業・経営

ネットワーク組織論から考える起業を成功させるコツ

ネットワーク組織論から考える起業を成功させるコツ
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開業する時は、何から何まで自力で考え判断しようという決意が重要です。今後どのようにビジネスを育てていくべきなのか、という大テーマもそのひとつです。

今回は、創業時のビジネスの特徴を確認した上で、特にメリットがあると思われる「ネットワーク組織」の概念と特徴について見ていきます。

今後の方針を考える際の参考にしてください。

創業期のビジネスがどんな特徴を持つのか、改めて整理しておきましょう。

まず、財務基盤が弱いことがあげられます。自己資金のみで開業する場合は特に、「お金ならいくらでもある」という状況は考えにくいでしょう。また、金融機関等から融資を受けることができた場合でも、それは創業時に設備投資や仕入れを行う必要があるから借りたお金であり、最初に投資してしまいます。財務基盤が弱いことは、そのままリスクに対して脆弱であることを意味します。少しの経営環境の変動で、ビジネスが回らなくなる可能性があります。

生産規模が小さいことも特徴です。創業していきなり大規模な工場を保有したり、数十人の従業員を雇用したりすることは困難ですから、いわゆる「薄利多売」のビジネス戦略を取ることができません。

さらに、商品やサービスのラインナップも、同業の大手や中堅企業に比べるとかなり絞ったものになる場合が多いでしょう。ヒト・モノ・カネの全ての経営資源が限られているため、多品種のラインナップを開発・維持するコストを捻出することができません。

一方で、創業期のビジネスならではの長所もあります。社長が創業者自身であり、自分のビジネスの成長に強い情熱を持っていることが最たるものでしょう。自分の事業に愛着を持ち、成長させるために全力を注ぎます。

そして、意思決定が早く、フットワークが軽いことも長所です。1人で起業した場合には自分が良いとさえ思えば意思決定できるため、チャンスを逃す可能性が低いのです。

起業したらネットワーク組織の構築を目指すべし

上記のように、創業期のビジネスは財務基盤や生産能力に弱点があるものの、創業者が自分のビジネスに情熱を注いでおり、フットワークが軽いという長所もあります。

こうした特徴を持つ場合、「ネットワーク組織」という組織のありかたを目指すのが良いと言えます。

ネットワーク組織とは、社会ネットワーク論という学問分野で研究されている組織概念で、「複数の個人、集団、組織が、特定の共通目標を果たすために、社会ネットワークを媒介にしながら、組織の内部もしくは外部にある境界を越えて水平的かつ柔軟に結合しており、分権的・自律的に意思決定できる組織形態」であると定義されています。「人脈」という概念とは違うニュアンスを持っていることが分かると思います。

ポイントは個々のプレイヤーが水平的で分権的に結びついているという点です。それぞれが自律的に行動し、ネットワーク内の他のプレイヤーと互恵的な協力関係の中で、リスクや不確実性に柔軟に対応することができます。

ネットワーク組織の代表例は企業間の提携関係です。これこそ、創業期のビジネスが目指すべき組織形態と言えます。つまり、自分だけでビジネスを完結させることを目指すのではなく、顧客はもちろん、同業他社や他業種のビジネス、公的な支援機関などとの長期的な取引関係や提携関係を構築する可能性を積極的に追求し、その関係のネットワーク全体として様々な経営課題やリスクに立ち向かうのです。

ネットワーク組織は個々のプレイヤーの自律性を尊重することから、自分のビジネスの自律性を奪われることもなければ、同じネットワークに属する他のプレイヤーの自律性を侵害することもありません(侵害しようとする者はネットワークから追い出されます)。

ネットワーク組織を構築することで様々なメリットを受けることができますが、今回は代表的な3つのメリットをご紹介しましょう。

1.自己組織的な組織構造

ネットワーク組織は「自己組織的」な組織構造を持ちます。自己組織的とは、自分がおかれている環境を分析し、未来の組織構造を主体的にデザインし、その姿に向けて自ら構造転換を進めていくことができるということを意味しています。

ネットワーク組織内の自律的なプレイヤーは、各々が自分を取り巻く環境を分析し、他のプレイヤーと情報交換を行います。そして、なにか問題が感知されると、その問題をうまく解決できるように自らのネットワークの結びつき方を調整します。

ある時にはA社がネットワークの中心になって問題を解決し、また別の時にはB社とC社のタッグが中心になるでしょう。このように柔軟に構造転換を行うことで、A社だけ、B社だけでは解決できなかった問題にも対応することが可能になります。

2.弱い紐帯の強さ

ネットワーク組織の個々のプレイヤーは、それぞれが異なる活動を行っています。また、所属している組織も異なるため、その結びつきは「弱い紐帯」であると言えます。

組織社会学者のマーク・グラノベッター(Mark Granovetter)は、弱い紐帯によって結び付けられたネットワークは、異質な情報や人材、資源が集まっており、全く新規な結びつきが起こりやすいため、イノベーションが起こりやすいと論じており、この性質は「弱い紐帯の強さ」と呼び習わされています。

創業期のビジネスのフットワークの軽さを活かし、様々な業種の人々と長期的な契約関係や提携関係というネットワークを構築することにより、硬直した大手では思いもよらなかったような製品やノウハウを生み出すことができる可能性が高まります。

3.信頼関係の醸成

ネットワーク組織内のプレイヤー同士の間には、徐々に信頼関係が育まれていきます。ネットワーク組織における信頼関係の構築は、その活動を促進するための重要な要素であるだけでなく、取引コストの削減も可能にします。

長期的に取引していて、信頼しあっている関係ですから、相手の細かなニーズについても理解しており、少ないコストで高い付加価値の商品・サービスを提供することが可能になります。一方で、いわゆる市場取引的な関係、つまり単発の取引をするだけの関係であれば、このような互恵的な状況は生まれません。

ただし、この信頼関係の醸成によるメリットだけを追求していると、ネットワーク内が同質化していってしまい、「1.自己組織的な組織構造」や「2.弱い紐帯の強さ」で述べたメリットが発生しにくくなってしまいます。常に新たなプレイヤーを増やしていき、バランスを保つことが重要です。

まとめ

創業期のビジネスには財務基盤の弱さや生産能力の小ささが弱点となる一方で、創業者が自分のビジネスに情熱を注いでおり、フットワークが軽いという長所もあります。

こうした特徴をもつビジネスは、ネットワーク組織を構築することで、ビジネスの成功確率を高めることができます。

ネットワーク内の個々のプレイヤーが水平的で自律的に結びついており、自己組織的にネットワーク構造を変化させていくことで経営環境の変化やリスクに柔軟に対応することができ、さらに異質なビジネス同士が結合することでイノベーションを起こしやすくする「弱い紐帯の強み」というメリットも享受できます。また、長期的な互恵関係が信頼関係を醸成し、取引コストの削減や品質の向上も可能になります。

創業の際はぜひフットワークの軽さを活かし、ネットワーク組織の構築を目指してください。

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