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消費者を「操作」しようとするマーケティング観はインターネットの普及で過去のものになりました。

現代的なマーケティング論では、「買い手と売り手の価値の交換」としてマーケティングを捉えています。

マーケティングの目的を勘違いしないようにするために、詳しく見ていきましょう。

現代ほどインターネットが普及する前のマーケティング論では「いかに特定の層の見込み客に、彼らにマッチした広告宣伝を到達させるか」という点に重点が置かれていました。

例えばテレビCMで考えてみましょう。何の工夫もなく適当な時間に適当なCMを流したのでは、あまり成果が得られません。まず自社がターゲットにする顧客は誰なのか明確にしなければいけません。サラリーマンなのか、主婦なのか、学生なのか。主婦であれば、彼女たちがテレビを見る時間帯はいつ頃なのか。彼女たちの興味を集め、購入まで導くにはどのようなCMを作ればいいのか・・・。

こうした分析を積み重ね、見込み客を「操作」し、自社の商品やサービスの購入に誘導することがマーケティングだと考えられていました。

ウェブの普及で消費者の操作は難しくなった

しかし、インターネットが普及して、いつでもどこでもウェブにアクセスできる環境が整ってくると、状況が変わってきます。いままで「操作」の対象であった消費者が力を持つようになってきたのです。

ウェブは非常にフラットなネットワークです。本質的に、誰も管理者になることができません。ウェブ上には商品やサービスについての広告も存在しますが、その広告と同等の資格で、商品やサービスについての口コミや比較情報が存在します。

インターネットが普及する前の消費者はバラバラです。マスメディアに乗って発信されるマス広告を受け取っても、それが本当に価値ある商品・サービスなのかを知る術は非常に限られていました。しかし、インターネットが普及して、「検索」という文化が当たり前のものになると、名も知らない消費者同士が連携することが可能になりました。

家電に詳しい人が家電を比較する情報を発信し、新製品を使ってみた主婦がブログで使用感を書いて共有し、新しいカフェの居心地を学生たちがSNSでつぶやきます。すべての情報は検索エンジンによってアクセス可能な形で整理されており、誇大広告のウソは見抜かれる時代になりました。

マーケティングは買い手と売り手の価値の交換

インターネット隆盛の時代に移行するにつれ、従来の操作的なマーケティング観は見直されていきます。現在では「マーケティングとは買い手と売り手の価値の交換である」という見方が有力です。

もはや消費者は広告宣伝によって操作される弱い存在ではありません。自分たちで情報を集め、広告のウソを見抜き、良いものの情報を共有する力を持っています。

そこで、「弱い買い手」という先入観を見直し、買い手と売り手が対等な立場にあり、売り手は買い手と協力してビジネスを行えばよいのではないかという発想が生まれます。

すなわち、売り手から買い手へ「広告」ではなく「価値」を提供します。例えば無料の試供品や役に立つ情報など、その形は様々です。買い手は提供されたものに本当に価値があるのかを見抜き、それが良いものであれば他の消費者に情報を共有します。

こうして、売り手は買い手から「好意的な評価」や「情報の拡散」といったマーケティング的な資源を得ることができるのです。

この「買い手と売り手の価値の交換」というマーケティング観は、マーケティングの重要な部分において買い手の評価や行動に依存するわけですから、売り手はある種の不確実性を引き受けることになります。

特に、これまでマス広告の操作力をフルに活用してきた大企業にとっては都合が悪いものです。一方で、小さな企業にとってはチャンスになります。たとえ巨額の広告宣伝費を用意できなくても、買い手にとって価値となるコンテンツを発信していれば買い手自身がそれを発見し、拡散してくれるわけです。

いわば、売り手は買い手と協力することによって、ビジネスを成長させていくのです。

まとめ

マーケティングの目的は買い手の「操作」ではなく「買い手との価値の交換」です。ここを間違えると、どんなテクニックを使っても効果的なマーケティングを行うことはできません。

あなたの会社が行おうとしているマーケティング施策は、本当に買い手にとって価値になっているでしょうか?どこかで買い手を騙したり、強制しようとしたりしていませんか?

具体的なマーケティング戦略立案の際にも、「買い手は弱くない」ということをぜひ思い出してくださいね。

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